ワインの豆知識
ワインはぶどう果、またはぶどう果汁を発酵させてつくった「ぶどう酒」をいい、人類はワイン醸造上の失敗から、様々な酒を生み出した。
たとえば、ワイン貯蔵中の事故である再発酵からスパークリング・ワイン(発泡性ワイン)が生まれ、産膜性酵母の汚染からは『シェリー』、貯蔵中の品温の異常上昇から『マディラ』が生まれた。また、ヴェルモットや、ブランデーもワインの仲間である。
ワインの生産量
世界のワイン生産数量は欧州を中心に毎年2700万kl前後である。国別にみるとフランス、イタリア、スペイン、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリア、中国等の生産数量が多い。ワインの主産国における消費量が減少しているため、世界的にみるとワインは生産過剰である。
ワイン生産量/消費量の上位10か国(出典ジェトロ:http://www.jetro.go.jp/world/europe/fr/foods/trends/1011001.html)
国名 | 生産量 | 消費量(世界順位) | 輸出量 |
イタリア | 4,598 | 2,670(3) | 1,851 |
フランス | 4,567 | 3,217(1) | 1,525 |
スペイン | 3,476 | 1,310(7) | 1,508 |
米国 | 1,987 | 2,825(2) | 423 |
アルゼンチン | 1,505 | 1,117(9) | 360 |
中国 | 1,200 | 1,359(6) | 16 |
ドイツ | 1,026 | 2,078(4) | 354 |
南アフリカ | 978 | 356(14) | 355 |
オーストラリア | 962 | 477(11) | 786 |
チリ | 823 | 298(18) | 610 |
ぶどうについて
ワインの性格と酒質は原料ぶどうで決まる。ワインに使われるぶどう品種は、ヨーロッパ系のヴィティス・ヴィニフィラ種とアメリカ系のヴィティス・ラブルスカ種、および両者の雑種に大きく分けられる。特に、ヴィニフィラ種の中でも以下の品種は、ワインの熟成に伴い品質向上が期待できる非常に優れた品種であると考えられている。
- カベルネ・ソーヴィニヨン(ボルドー地方)
- ピノ・ノワール(ブルゴーニュ地方)
- シャルドネ(ブルゴーニュ地方)
- リースリング(ドイツ・ラインガウおよびモーゼル地方)
同一のぶどう品種でもクローン(“枝変わり”)によって作付面積あたりの収量、病害虫に対する耐性、果房の重量、糖分、生成ワインの品質等が異なる。現在、フランスで栽培されるカベルネ、ソーヴィニヨンのクローンは13種、シャルドネで18種になる。
ワインができるまで
赤ワイン
・黒色系のぶどうを破砕し果梗(ブドウについている小さな枝)を除去・果皮、果肉、種子を一緒にタンク
に入れ、27~30度で10~20日発酵させる。この状態を「醸し」という。
・発酵とともにアルコールが生成し、果皮からは赤色色素のアントシアニンが、また、種子からは渋みの
主体を形成するプロアントシアニジンが抽出される。
・発酵終了後に圧搾し、マロラクティック発酵(MLF)に移る。MLFにより鋭い酸味を有するリンゴ酸は口
当たりの柔らかい乳酸に変化する。
・高級赤ワインでは樽による貯蔵・熟成は必須である。
また、加熱処理による色素等の抽出、7度以下の低温で1週間程かもしてから主発酵に移る低温醸し法の採用やカルポニックマンセレーションにより、若くても飲用可能なかたちにしたものも見られる。さらに逆浸透膜装置や常温減圧濃縮装置を用いて果汁、果醪を濃縮することも実用化されている。
白ワイン
・果皮の緑色系あるいは黄色系のぶどうを破砕、除梗し、直ちに圧搾・搾汁する。
・得られた果汁を発酵させ、適宜の甘辛の時点で発酵を停止させる。
発酵温度は12~20度で、それに伴い発酵期間も10~30日と幅が広い。白ワインの場合、シャルドネを原料品種とした ものを除き、フレッシュ感を持たせるために、MFLは生起させないことが多い。
ロゼワイン
赤ワインの醸し期間を短縮または、赤、白用ぶどうとの混醸により作成する。
赤ワインと白ワインを調合してロゼワインを造ることはフランス島の主産国では、発泡性ワインを除き禁止している。 近年、醸造法が多様化し、白ワインではフレッシュでフルーティな風味を求めて圧搾方法や果汁前処理法の改良が進め られた。また、香味に厚みを持たせるために「醸し」の状態で数時間置いたり、人工凍結ぶどう果の利用や樽発行等も 行われている。
フランスワインの歴史
紀元前600年頃、古代ギリシャ人がフランスにたどり着き、そのときにぶどう栽培とワイン造りをもたらしたといわれている。その後、ギリシャ人たちは、ぶどうの樹がオリーブやイチジクが生育可能な場所であれば栽培が可能であるとして、南仏からローヌにかけてぶどうを植樹したとされる。
しかし、それ以外への植樹はなかなか進まず、ボルドーに1世紀頃、ブルゴーニュに3世紀頃、ロワールやシャンパーニュはそれ以降と言われている。
20世紀に入り、長い歴史を持つワイン造りに厳しい規制がかけられることとなる。1936年から翌年にかけて法制化された原産地統制呼称制度(AOC)である。
今でこそ各地域、地区のワインの品質保持・向上に役立っているが、当時はというと、19世紀末のフィロキセラ禍※や、大戦の影響により、ワイン造りに困難な状況が続いて市場が乱れ、多くの偽物が販売されていた。そのため、自らの財産である原産地の呼称を守る方法を考えた末でのことだった。
※フィロキセラ禍とは、1863年に始まった害虫によるヨーロッパ葡萄品種の壊滅的被害のことをいう。19世紀、フランスのワインとブランデーはその品質から世界でも最高の地位にあり、フランスのワインとブランデーは世界中で大量に消費される酒で、フランスの重要な産業の一つだった。ところが1863年に突如異変が起きる。原因はフィロキセラ(葡萄根アブラムシ)という害虫だった。フィロキセラは葡萄の根に寄生し、葡萄を枯らしてしまう。フィロキセラはヨーロッパ在来種ではなく、アメリカからやってきた外来種だった。フィロキセラに対して抗体を全く持っていないヨーロッパのぶどう品種は、寄生されると致命的な確率で枯れてしまう。(出典:Wikipedia)
現在、フランスのワインの45%以上が「AOCワイン」に認定されている。そのすぐ下に位置する「VDQS(指定地域優良)ワイン」は、1%未満(AOC昇格を待つ予備軍的存在で、その多くが昇格した)。」
南仏ラングドッグ・ショーン地方を中心に増加しているのが「ヴァン・ド・ペイ」。
日本でいう地酒的存在で、28%にまで増加。反対に原産地を記さない「ヴァン・ド・ターブル」は減少傾向にあり9%ほど(残りは蒸留酒用)。
フランスでは、ワインの消費量が減少し続け、1970年代後半に国民一人当たりの消費量が100リットルだったのに対し、21世紀に入ってからは50リットル。
また、ぶどう栽培面積も、70年代後半に約123万haだったのに対し、2003年の記録で約85万haまで減少している。しかし、上記のとおり、カテゴリー別割合の変化をみると、生産量は減りながらも、ワインの品質は底上げされている。
他国との競争は年々厳しさを増しており、各国がフランスワインの品質に追い付け追い越せと研究を積み重ねてきた。輸出にそれほど関心を示さなかった欧州の他国が、軒並み頭角を現すようになった。 フランスワインの最大の魅力は「テロワール」である。テロワールとは、気候や土壌条件だけでなく、その土地にかかわってきた人々の労力や知恵も含む言葉で、一朝一夕には作り上げられない。
AOCワインのラベル
ボルドー地方
ボルドー・ワインは「村命」「地区名」「地方名」のカテゴリーに分けられる。しかし、村名に地区名とともに、特定のぶどう畑の名前=(大半が)シャトー名=作り手名が、大きく記載されている場合が多い。また、ボルドーでは、各地区での格付けを併記しているものもある。
ブルゴーニュ地方
ブルゴーニュ・ワインのカテゴリーは4つに分けられる。もっとも各上の「特級畑」から、「一般畑」「村名」「地方名」まであり、順に範囲が広がっていく。村名と畑名が併記されていても“Premier Cru”あるいは“ler Cru”という表記がなければ、単一畑のぶどうを使っているが、村名ワインである。
AOCワインについて・・・
AOC(原産地統制呼称)は、1935年に設立された政府機関(INAO=Insitut National de l’Origine et de la Qualite:2007年よりこの名称に変更)によって、1936年から37年にかけて多く認定された名称である。AOCで決められた条件をパスしなければ、ラベルにその表記はできない。AOCごとに膨大な書類に記されている内容は、限定された産地の詳細、使用可能なぶどう品種(使用できる最少と最大の割合)、ぶどうの潜在アルコールとワインの最高アルコール度数、最大収穫量、収穫してよい最低樹齢、最低限度の植樹密度、仕立て方法、その他、醸造に関することなど、数多くの項目がある。
ボルドー
ボルドーワインの歴史
ボルドーはじめ、フランスのワイン産地は川の流域にあることが多い。また、ボルドーの街は古くからの港町で各国との交易が盛んに行われ、ワイン発展にも川の存在が大きくかかわっている。
12世紀半ばにアキテーヌ地方の侯爵夫人アリエノールと、アンリ・プランタジュネ(後の英国王ヘンリー2世)の婚姻によって、英国領となり、同国との交易が栄えた。また、17世紀にはオランダとの交易で灌漑技術を学び取り、メドック地区の畑が発展することになる。
川の存在はワインの地区ごとの特徴にも影響している。ボルドーの土壌は石灰岩の上に、川が運んできた堆積土でできている。そして、ジロンド川左岸のメドック地区では砂利や砂が多く、主要品種はカベルネ・ソーヴィニヨンに。
ドルドーニュ川右岸のサンテミリオンやポムロール地区では粘土質が多く、主要品種はメルロに。このように主要品種が異なることで、仕上がるワインの性質も異なっている。
特徴
ボルドー・ワインの特徴として、複数品種のブレンドが挙げられる。複数のぶどう品種を使うことで、それぞれの長所、短所を補完し合い、バランスの良いワインに仕上げられている。また、複数品種を栽培することで、年ごとの気候の違いによるワインの出来の差を最小限にとどめる事ができる。現在ボルドー地方の栽培面積は12万4000ヘクタールほどで、ワインの生産量は約9億本。その約90パーセントが赤ワインで、白(甘口、辛口を含む)は減少傾向にあり、約10パーセントとなっている。少量のロゼとスパークリングも存在する。また、50以上のAOCがあり、フランスのAOCワインのうち26パーセントがボルドー産。ボルドー・ワインの99パーセントがAOCワインというのも特徴的だ。
ボルドーの代表銘柄
ブルゴーニュ
ブルゴーニュワインの歴史
2~3世紀頃、ローマ人によってブルゴーニュでぶどう栽培が始まり、12世紀以降の修道士たちの活動で、ワイン造りが大きく発展した。ベネディクト派に続き、この地に布教の拠点を置いたシトー派修道士たちは、常に試作を重ね、比較し、記録を取り、研究を重ねていくうちに、出来上がるワインが畑ごとに異なるのに気付いた。修道士たちはその時すでに「テロワール」の概念を持ち、畑や区画の優劣や個性の違いを利用してワイン造りを行っていた。
特徴
ブルゴーニュの産地は、北はシャブリに始まり、コート・ド・ニュイと コート・ド・ボーヌ(この二つを総称してコート・ド・ドールと呼ぶ)、その南にコート・シャロネーズ、マコネと続き、ここまでで約28,000ヘクタールである。これに、ボージョレが約22,000ヘクタールあるが、すべて合わせてもボルドーの半分にも満たない。ボルドーの場合は大半の醸造所が畑に併設され、格付けがシャトー(醸造所)ごとになされているのに対し、ブルゴーニュでは複数人が所有する畑ごとに格付けされているため、複雑な構造となっている。
これは、フランス革命で教会や貴族の領地が政府に没収、売却・分割され、さらにナポレオン民法にて相続が行われるたびに細分化されているためである。このような状況下において、造り手は、ぶどうや果汁、ワインを購入して造る“ネゴシアン”と、自社畑のみぶどうをのみ使用する“ドメーヌ”に大きく分かれる。近年では“ドメーヌ”需要が高まっている。もう一つのブルゴーニュの特徴は、ほとんどが単一ぶどう品種で造られることである。ブルゴーニュ地方は大陸性気候であり、ボルドーと比べると冬は寒く、夏は涼しくて短い。このため、早く熟すぶどう品種が選ばれる。